石山 裕雅(神楽家元)

第19回 石山 裕雅(神楽家元)

武州里神楽 石山社中 十世家元 石山裕雅(いしやま ひろまさ)

昭和46年、四世紀に亘り武蔵国に里神楽を相伝してきた無形文化財「武州里神楽」石山社中の十世嫡子として生まれる
石山家は広域な神社を統括する神官を始祖とし、土御門流陰陽師の称号を下賜された関東でも最も古い正統神楽太夫の一家の後継者として幼年より八世政雄・九世大隅に勲陶を受ける
国指定重要無形文化財「若山社中」丸謙次郎に師事 長唄三味線・今藤長由利に師事
国指定重要無形民俗文化財「若山社中」四世家元 若山胤雄に勲陶を受ける
能楽観世流重要無形文化財総合指定シテ方・遠藤喜久に師事

里神楽・江戸囃子・寿獅子の囃子・舞全般を納める  邦楽囃子にも修練を積む
大河ドラマ、CM、歌舞伎座、国立劇場、国立能楽堂、全国各地の劇場、外国公演などに出演
横笛教室を展開するほか、講演会・セミナー講師としても活躍の場を広げる
「石山裕雅の会」「ライブ和魂」「里神楽を楽しむ会」「雅の会」などを主催
CD「笛の季節」「和を以て」 各種 DVDをリリース  焼酎「里神楽」 スイーツ「里神楽」プロデュ―ス
都心、埼玉を拠点に多くの公演会を主催し、創作・古典演目を通じて各界一流の演者と共演
「日本民俗芸能協会」「全日本郷土芸能協会」「埼玉県文化団体連合会」会員
主な神楽奉納神社 井草八幡宮 保土ヶ谷神明社 石神井氷川神社 荻窪八幡神社 など

 

1) なぜ、この仕事を始められたか?
もともと、武州里神楽の跡取りとして生まれましたが、最初から素直に跡を取ろうと思ったわけではなく、ギターを弾いたりしてました。
当時は、長渕剛さんが好きでした。
小さなころから、太鼓を習いましたが、父親に習うので、やる気が起きず、中学生のころ、父親に「やる気がないなら、家から出て行きなさい。」と言われたことがありました。
その後、父親でない別の先生に篠笛・能管を習うことになりました。
それでもやる気は起きず、気が進まない中で、習ってはいましたが、ある日、ビデオで素晴らしい演奏を聴き、衝撃を受けました。
若山先生という天才との出会いでした。
神楽の笛は、基本は決まっていますが、個人の技量で、アレンジすることが出来、その演奏は、今まで聴いたことのない素晴らしいものでした。

その5年後くらいに、三社祭りの浅草神社の神楽殿に、たまたま、勉強に伺った折、若山先生がいらっしゃり、私の笛を聴かれて「君は素晴らしいね」とほめていただきました。
その方は、その当時習っていた先生の、その上の先生でした。
このご縁が、神楽の道に進もうと思ったきっかけであったと思えます。

その後、若山先生に習うことになりましたが、芸の道は、日々鍛錬ですので、叱られることばかりでした。
それから7、8年後、私の笛の先生が主催される会で、最初にビデオで見た「鎌倉」のフレーズを吹くことになりました。
それは、ずっと「私には荷が重い」と封印していたものでしたが、前の晩に、もう一度、吹き直してみました。
当日、吹いたら、その先生が同じ舞台に舞でいらっしゃり、「さすが石山は凄い」ととても褒めていただき、嬉しかったのを覚えています。
それが私の神楽道への支えになっております。

2) 現在の活動、そして未来へ
父親の代までは、武州里神楽は、神社のお祭りなどでご披露するだけでしたが、私になってから、どんどん都心に出て行き、有料の主催公演を始めとして、様々な出演の依頼を受け、人脈を広げて、様々な場所でご披露するようになりました。
神楽公演は、満席になるくらいの集客です。
石山社中が伝承する芸は、たくさんの種類があり、通常の皆様のご存知の神社の神楽だけでなく、江戸の囃子や獅子舞や巫女舞も入ります。
会場や、その会の趣旨に合わせて演奏など出来るので、たくさんの方にお引き合いいただいています。

最終的に目指しているのは、ユネスコ無形文化遺産です。
伝承する芸は形が遺りませんので、保存しないと消えてしまいます。
正統な神楽の社中が遺って頂きたいと思います。

今の神楽の業界は、芸が落ちています。
素人の方が俄仕立てでやっているものも多いです。
これからも品格があり、神道にもとづいた神楽道を大事に伝えていきたいです。
日本国がある限り、神楽が続いてほしいと願っています。

3) 将来音楽の道に進もうと思っている方たちへ
神楽を習いたい人は、入り口はカルチャーセンターなどで習うことが出来ます。
もっと学びたい方は、お稽古場に来て、学んでいます。
私はそういう家に生まれましたので、全然関係ない家に生まれた方がやられる場合は、
自分が頭になって興行するくらいの気概がないと、なかなか、食べてはいけません。
高い志を以てほしいです。
これからやられたい方には、日本の国の本当に尊い、大切なものにつながるものなので、その気概や思いを持って、生涯鍛錬を続けてほしいです。
そして、なんでもいいので、一つ抜きん出た芸を習得してほしいです。
太鼓でも、一つの演目でもいいので、一つ負けないものを作ってほしいです。

今、子供が一歳八ヶ月ですが、自主公演では、お衣装などを着せて受付にいるので、既に人気者になっています。
こういう家に生まれてきたのですから、きっとこの道を進んでくれると私も父も、ご先祖も願っています。

(2017年12月取材)


 

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